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DIR EN GREYと宮本佳林【文字量多め】ブログ
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京(sukekiyo/DIR EN GREY)「自分の中の固定観念を壊していきたい」表現としての深淵を探る ロングインタビュー前編
2016年4月28日(木) 12:00配信
元URL(削除済):http://tsutaya.tsite.jp/news/j-rock/i/28608022/
京(sukekiyo/DIR EN GREY)「自分が抱えている熱量を出してこそ“自分”がいる意味がある」 表現者としての深淵を探る ロングインタビュー後編
2016年5月2日 (月) 12:00 配信
元URL(削除済):http://tsutaya.tsite.jp/news/j-rock/i/28608023/

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京(sukekiyo/DIR EN GREY)が主宰する〈京 個展2016『我葬』〉が、4月6日~10日の5日間に渡り、東京・SPACE 雑遊にて開催された。彼がこれまで発表してきた歌詩の他、書き下ろしの作品も含む詩集『我葬の詩』下巻の発売に伴う個展となり、アートワークと共にデザインされた詩・全88篇を展示(sukekiyoの公演名ではないが、空間を自由に使った“宙吊り”のものと、壁に掲示されたものがあった)。


また、『昇り眼』なる巨大な絵や、オブジェの『我葬の木』も京の手によるもので、『我葬の声』と名づけられた部屋では彼の朗読をヘッドホンで聴けたりも。さらにはスクリーンに流れる映像の前で、演劇実験室⦿万有引力による舞台芸術と呼べる演出や、尺八演奏家・岩田卓也の即興演奏などがあり、両者のパフォーマンスは京が創る“作品”と絡み合いながら生まれるものであった。

そして個展が終了して数日後、京に話を訊く機会を得た。ここでは、『我葬』や『我葬の詩』に込めた想いについて、そして、そこから派生した貴重な話まで語り尽くした“インタビュー・前編”をお届けしたい。

京 個展2016『我葬』 会場風景

-昨年8月以来、2度目となる個展が終了しましたが、今回の手応えはいかがですか?

「前回の個展を終えてから、改善したかったところは今回全部直せたと思うんですけど、“次はこんな感じがいいな”ってものが、もうすでにあるんで。やって終わりじゃなくて、次にやりたい新しいことが明確に見えてきているから良かったなと。それでも反省点も出てきてますけどね」

-今回の展示の仕方ですが、前回のようなオーソドックスな配置ではなく、ランダムに空間に吊り下げて、なおかつ表裏で展示されたりもしていて。だから、決まった順路がないという。

「そうですね。前回も個展と言いつつ、匂いなどの空間演出で体感してもらったり、万有引力さんとのコラボを採り入れていたんですけど、さらにその上を行くとなると――自分の中の固定観念を壊していきたかったし、個展っていう概念すらもどうなのかなっていう。なんていうか、あの空間全体を自分の頭の中に見立ててというか……“これ、ジャンル何なんやろ?”っていうものにしたくて。そういう新しいところを作っていかないと意味がないなと。もちろんメインは作品なんですけど、それをちゃんと見せる/見せないとかいうことすらも、全部新しい考え方にしたかったんで。とりあえず自分が思いついたことを話して形にしたら、あんな感じになったという」

-歌詩の位置に関しては、どう決めていったんですか?

「表裏になってるのも、この歌詩の裏には、これのほうが面白いだろうなとか考えて。あとは会場に入った瞬間に見える絵柄と、奥に入ってから見える絵柄って全然違いますよね。そこで感じる世界観が、また変わってきたりする。そういうことも考えながら配置は決めましたね」

とにかく他にないものをやらないと意味がない
京自身が手がけた「昇り眼」

-そして、巨大な黒いボードに描かれた『昇り眼』は、力強くてインパクト充分でしたね。

「あれは、自分の意欲やパワー感がどんどん先に向かって昇っていくイメージで描いてます。眼がモチーフになってるんですけど、実際の眼ではなくて、真実を見る眼や心の眼といったものですね。それがどんどん新しい世界に飛んでいく――そういったことを頭に置いて描き始めたんですけど、大きい絵を描くのは初めてなので、すごく難しくて。生命的なパワー感だけでもなんとか伝えたいなと思って仕上げました。あの絵の準備期間は2日間しかなかったんで、その間に会場にちょっと行っては描いて、ちょっと行っては描いてという風にして、なんとか間に合いましたね(笑)」

演劇実験室⦿万有引力とのコラボレーション ☆

-万有引力の方のパフォーマンスに『昇り眼』に引き寄せられる動きがありましたけど、絵に“生命感”が込められていたとなると、あの演出にもすごく意味が出てきますね。

「万有引力さんは、言葉じゃなく肉体だけで表現しているじゃないですか。パワーの塊みたいなイメージがものすごくあって、そことのリンク性は絶対あるなと思ってたんです。一応、歌詩を全部渡して、万有引力さんなりの歌詩の解釈でストーリーを考えてくださいと言って。あまりガチガチに決め込んでも良い部分を殺してしまいそうで嫌だったんで、細かい指示はしてないんですけど」

尺八演奏家・岩田卓也の即興演奏 ☆

-さらに、尺八の演奏も即興だったと聞いて驚いたんですけど、勢いと緊張感がありました。

「sukekiyoでもDIR EN GREYでも、即興で歌ったり体で表現したりするんですけど、逆に自分の声や曲をバックに即興で演奏したらどうなるんだろうな?って想いがずっと頭の中にあって。やっぱり即興でないと生命感が今イチ出ないんですよね。決まった音でも生命感はあるんでしょうけど、その時の空気感を感じたまま演奏するところに、よりパワー感が出てきたりするので。たぶん、あの方もそこを読み取ってやってくれてたと思うんですけど」

-いうなればロックとは無縁の世界の人が、京さんの声に何を感じて、どういった音を出すのかはシンプルに興味深いですね。

「逆に僕自身も、ロックっていう縛りもないんですけどね。まあ、端から見たらロックと万有引力も合わないだろうし、しかもそれをライヴじゃなくて個展でやるっていうところとか、とにかく他にないものをやらないと意味がないなって思っていて。もともと和の世界観も好きだったので、尺八のような和楽器とも合うなとは思ってたんですけど、実際やってみたらすごく相性もよかったし。尺八奏者の方も楽しんでやってもらってたので、いい化学反応ができたんじゃないかなと」

“みんなで作っていく”というところもキーワードとしてあった
我葬の木(京 個展2016より)

開催中に赤い紙が結びつけられていった『我葬の木』☆

-あとは、『我葬の木』も京さんが作ったオブジェなんですよね。

「そうですね。朗読部屋(『我葬の声』)の暖簾に印刷されていた絵は僕が描いたものなんですけど、手に眼がたくさん付いていて、さらにそこから触手みたいなものがたくさん出てるんですね。それを一度カタチにしたくて、実際に自分の手の型をとって、中央に配置して、触手を木の枝に変えて作ったんです」

-お客さんが抱える“痛み”を赤い紙に記入して、それを折りたたんで木の枝に結びつけていって、最終日に完成に至るという。

「普通だったら自分の願いを書いたりすると思うんですけど、“痛み”がテーマなので、もう真逆の負の感情しかないのもいいなぁと。しかも、みんなでただ作るんじゃなく、一人ひとりの強い想いがこもっていて、気がついたらそれが作品になっている。これは面白いなと思ったし、自分ひとりでもできないし。それと、日を追うごとにだんだん変化していくというのも、やってみたかったことだったんです。演出上の理由もあったにせよ、黒い服で来場してもらったこともそうですけど、“みんなで作っていく”というところもキーワードとしてあったので。sukekiyoのライヴでも、お客さんもそこの意志を分かった上で行動することによって、より一体感が増すというか」

-たしかに。『我葬の木』に想いを託すことで、“痛み”が浄化されるイメージだったんでしょうか?

「ええ。最終的に、お寺に持っていって供養しようと思ってます」(註:取材後の4月中旬、豊川稲荷にて『我葬の木』のお焚き上げ供養が行なわれた)

-ちなみに、京さんも用紙の中は見ないですよね?

「見ないです。想いがこもった禍々しい塊ですからね(微笑)」

新品なままって面白くない。時間の積み重ねも “一緒に作っていく”ことに通じる
 

-では、詩集『我葬の詩』の下巻について。装丁や構成、デザインからも伝わりますが、ものすごく想いのこもったアートな作品だなと。編集をやっている人間からすると、制作者の苦労が偲ばれますが。

「ははは、そうですよね(笑)。それを分かってくれると、すごく嬉しいんですけど。とにかく、歌詩からイメージされるデザインをデザイナーと話して、ひとつずつ詰めていく作業がもう、めっちゃ大変でした。で、僕の写っている写真も髪の毛が長かったり短かったりすると思うんですけど、この詩集用にずっと撮りためていたんですよ。ちょっとでも時間ができたら、何かの合間に撮影して、このカットはあの箇所に使おうとか」

-そうだったんですか! この外ロケ写真は「zephyr」だな、とか?

「そう(笑)。何となくですけどね。普通こういった撮影って、1日で終わるじゃないですか。それだと面白くないので、いろんな時期の自分がいるようにしたくて。そういうところでも時間をかけていたんです。あとは、自分が「輪郭」のジャケットで描いたものより以前に描いた絵も使おうと思ってデザイナーに渡したんですけど、それも今回2つぐらい使われてますね」

-「MACABRE」と「Sustain the untruth」で使っているものですか?

「ああ、そうです。デザイナーがすごく気に入っていて、これは絶対に詩集で使いたいですって」

-そして、最新の撮り下ろし写真がまた、ヴィジュアルコンセプト的にすごく凝ったものですよね。

「そうですね。個展で流れる映像のイメージとか、ライヴで自分が持ってるイメージを考えて。普段は“これだとライヴができないな”とか“動きが制限されるな”ってことがあるんですけど、(詩集や個展で使用するのであれば)まったく無の状態で考えられるから。そうすると、ああいう風になったと」

-カテゴライズ不能なスタイルで、このセンスでやれる人はそういないよなと改めて感服しました。装丁に関しては、いろいろな紙質の用紙が使われているのをはじめ、アートワークに応じて、大きさの違うページや、薄く透明なプラスチックにデザインされたページも挟み込まれていて。豪華だし、楽しめるんですよね。

「すごくボリュームがあるので、飽きられても嫌だなと考えて。そうしたなかで、ストーリー性があるほうが自分のイメージに近かったので、無理言って(特殊なページを)付けたりしたんですけど(笑)」

-読み手を飽きさせないというのは、京さんが以前言っていた「自己満足だけで終わってはいけない」ってことに通じますね。

「今って、なんでもデジタルじゃないですか。で、実際にこの詩集を手に取ってみて、“これだったらデジタルでいいや”って思われる物だと、やっぱり意味ないんで。そこに今まで以上の労力を使わないと物としての意味がないから、そこはワガママに行かせてくれっていう」

-たしかに、手元に置いておきたい物になってますしね。

「例えば、sukekiyoの作品も詩集の表紙もそうなんですけど、あのヌメっとした素材って、指紋がめっちゃ付くんですよ。でも、あれはわざとそうしてるんですよね。新品なままって面白くなかったりするんで。どんどん指紋が付いていって、それすらも“作品”になるっていうか。時間の積み重ねを感じさせるし、それもさっき言った“一緒に作っていく”ってことに通じるし、ああいったあえて痕跡が残るようなものが好きで」

-ああ、なるほど。今後は僕も気兼ねなく触れます(笑)。今回いろんな時代の詩と対峙してみて、変遷を感じたりします?

「元にあるものはあんま変わらんなぁとは思いますけど、その日によって表現の仕方や出てくる言葉が違ったりするので。生きていく中で波もあるし。それを自分なりに楽しみながら読み返したりもしますけど」

基本、すごくマイナス思考だけど…そう思ってても進まないと
 

-それで、詩集に収録された「Un deux」の歌詩ですが、今年2月のDIR EN GREYの武道館公演で初めてスクリーンに映していましたよね。あれは京さんの中で、改めてこの言葉を伝えたいという強い意志があったからなのかなと。

「『Un deux』は、めずらしくっていうか、すごく前向きで……今までの歌詩も“隠れ前向き”みたいな、裏メッセージという感じにはなっていたんですけど、それがちょっと表に出始めた歌詩なので、なんか自分の中でもすごく新しくて。狙ってじゃなくて、素直にスッと自然な感じで、ああいう歌詩が書けたんです。だから、ちゃんとそれを形に出したかったというか。それを他のメンバーも感じてたのかな、うん。で、武道館の時も、最初と最後は絶対に「Un deux」にしたいって言ってたんで」(註:2DAYSのうち、初日の1曲目と、2日目の最後の曲が「Un deux」だった)

―それは、京さんから発信して?

「はい。逆に言ったら、あとはもうどうでもいいぐらい(笑)。そこだけは絶対にイメージがあったので」

-今ではより多くの人たちの中で、背中を押してくれる曲として存在してると思います。今の話にも通じるかもしれないですけど、書き下ろしの「報道に耳を傾ける耳無し」と「黙詩」などは、決して分かりやすい前向きさではないけれど、“生きる”ってことが根底に感じられて。近年、京さんから自然と生まれてくるものって、そこが共通しているところなのかなと感じたんです。

「そうですね。基本、すごくマイナス思考で、あまり前向きな言い方をしないんですけど、そう思ってても進まないと……やっぱりね、何も生まれないし、駄目だと思うんで。そこをもうちょっと変えていけたらな、と思ったりはしてますけどね。詩はあまり書きためないので、その書き下ろしの詩も結構ギリギリで出来たものですし」

-特に「黙詩」は、詩集の最後に置かれていて印象的でしたし。あとは、個展で「250キロ、フルスロットルで浮かれた売女もひき殺せ」っていうタイトルを見て、ビビッとくるものがあって。

「ああ、そうですか(笑)。結構昔のものですね」

-はい。ヒリヒリするシリアスなものがある一方で、一瞬だけブラックユーモアやシュールが顔を出すところに、京さんらしさを感じていて。例えば、sukekiyoのライヴでもあのレトロ風味のCMが流れて、“でもsukekiyoのライヴで、ププッて笑っちゃいけないよな”っていう変な葛藤があるというか。

「そうそう、ちょっとしたイジメ(笑)」

-ははは、そんな意図があったとは(笑)。

「そういうのが好きだったりするんで。まあ、“真面目だけでも面白くない”じゃないけど、こうあってこそ両方活きるというか。なんかカッコつけてるばっかりもどうなの? っていうところですよね。もうちょっと自然でいいけど、でも自然すぎなのもなぁって……だから今言われたような、“これ、笑っていいの?”っていう、ちょっと考える感じみたいなものは好きですね。ま、タランティーノの映画とか好きだったりするんで(笑)」

-ああ、納得です(笑)。

「“この無駄話いる?” みたいな(笑)。心の中でツッコむじゃないですか。やっぱり、そういうものが好きだったりするんですよね」

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京(sukekiyo/DIR EN GREY)ロングインタビュー“後編”では、ニューシングル『ANIMA』をリリースしたばかりのsukekiyoの話題を中心に、自身の活動スタンスから生き方までを激白。そこで語られた言葉の数々は、とても力強く、彼のパーソナリティが伝わる実に熱いものばかりであった。

京(sukekiyo/DIR EN GREY)

-sukekiyoの動きとしては先頃ニューシングル『ANIMA』が完成しましたが、リード曲の「anima」――これは強烈な名曲が来たなと。

「ははは、そうですか」

-ホントですよ(笑)。この胸を締め付ける哀しみのメロディは京さんならではですし、曲全体としてもsukekiyoの世界観の魅力が凝縮されていて。

「もともと「anima」は、もうちょっとバラードっぽいもので、テンポも曲の雰囲気も違ったんですけど、その時からメロディは変わってなくて。どうしてもこれを形にしたいなと思っていたんです。で、みんなと話をして、なんとかこういう形に収まったと。僕もすごく手応えを感じていて、次の代表曲になるんちゃうかなと思ってるですけど」

-まさに名刺代わりとなる、シングルで出すべき曲だと感じました。メロディを際立たせているものに、ピアノをフィーチャーしたアンサンブルがあると思うんですが、この形も最初からですか?

「バラードだった時は、ピアノじゃなくてギターやったんかな? アコギかなんかだったんですけど、それを全部ピアノに変えて。バラードすぎるのもなんかなぁ、っていう風に感じていたんで。ただ、「12時20分金輪際」のほうが手ごわかったですね。みんな結構苦戦して」

-苦戦したところというのは?

「いちばん苦労したのがAメロで、最後に付いたんですよ。サビはだいぶ最初の段階からありましたね。まあ、メロディが固まった時点で、バックのアレンジを徐々に変えていったりもするんですけど。あとは、構成にこだわって。いくつかパターンがあって、どれでも正解やなという感じだったんですけど、いちばんイビツな感じの…でも、まとまってるみたいなところを上手く突けたと思います」

-たしかに。一筋縄ではいかない展開が炸裂するんですけど、結果すごくメロディアスに収束していくというところが絶妙ですよね。同時に、この哀しい旋律や歌詩の空気感は「anima」に通じていて、どこか連作のようにも感じたんです。

「ああ、たしかにそうですね。歌詩は2曲とも、結構近い時期に書きました。なんか、メロディがそういう歌詩の世界観を呼んでたんですよね。で、やっぱりsukekiyoでは、自然と女性目線の歌詩が多くなるんです。メロディも早い段階で決まってたんで、この2つの相性はいいやろなぁって思ってましたね」


-「304号室 舌と夜」は、過去に京さんのソロ作品としてあったもののリアレンジですね。

「この曲は、結成当時からそこまでアレンジはせずにライヴではやってたんですよね。前回のミニ『VITIUM』か次の音源で入れたいねっていう話はずっとあって、なんとなくは作ってたんですけど。で、『ANIMA』のレコーディングに入って、「anima」と「12時20分金輪際」の2曲を集中してアレンジしていこうっていう時に、UTA(G)が“「304号室 舌と夜」をアレンジします”って言ってきて。“え、メインの2曲じゃなくて、そっち行くの?”みたいな(笑)。で、こういう形になって出来上がってきたので、“ああ、これも入れよう”と。彼も自由人なので(笑)、なるべく自由にさせてあげたいんで」

-『我葬の詩』〈下巻〉にも、オリジナル版の歌詩が載っていますし、比べてみても楽しめますね。そして、「leather field Collaboration with TUSK」について。最初TUSKさん(新宿心音会,THE SLUT BANKS/Vo)とのコラボって意外な気もしたんですけど、そうだ、昔は“七色の声を持つ男”と呼ばれてた!と思い出して。

「そう! そうなんです(笑)」

-はい(笑)。なので、京さんとマッチしないわけがないなと、すごくしっくりきたんです。

「昔から好きだったし、僕もそう言われていた当時から聴いていて、いろんな声を出すなぁって思ってたんで」

-実際、仕上がりもバッチリでした。ZI:KILL時代のTUSKさんのイメージがあってオーダーしたんですか?

「そうですね。もちろんTHE SLUT BANKSも、CRAZEにいた時代も聴いてますし。でも、やっぱり一番思い入れが強いのはZI:KILLの頃で。コラボをしたら、こんな感じになるんちゃうかなっていうイメージはあって、ほぼ一発録りぐらいの勢いで終わりましたね。TUSKさんのいいところを出したかったんで、基本“自由にお願いします”ってお願いして、ある程度歌いたい場所も考えてきてもらって。曲もTUSKさんが選ばれたものなんです。で、僕からも“ここを逆にしてみましょう”とか言ってみたりして」

-2人の声のチャンネルが左右が入れ替わるところですね。七色の声を持つフロントマン2人が時代を超えて対峙しているのは感慨深いですし、一発OKだったというのもさすがです。

「そうですね。“ここ叫んでいい?” って言われて、もうイメージしたそのまんまのシャウトが来て、“これこれこれ!”って(笑)。もう“はい、OKです”と」

燃えてるものをどんどん出さないともったいない

sukekiyo 
京(voice)
匠(guitar/piano)
UTA(guitar)
YUCHI(bass)
未架(drums)
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-それはキッズ心をくすぐられますね(笑)。sukekiyoは自分に残された時間と向き合ったことを機に始まったわけですが、始動から2年が経って、新たに今後やってみたいことも生まれてます?

「今に限らずですけど、単純に他にもバンドをやってみたい想いは常にありますよね」

-sukekiyoやDIR EN GREYでやるべきこととは別のアイデアがあるってことですか?

「アイデアもありますし、そういうものを取っ払って、単純に欲求みたいなところとかも素直に出していいんちゃうかなって。全部が全部やりたいことに特別な理由があるのかっていったら、そうじゃなかったりするじゃないですか。それも人間として自然でしょ、ってところもあるんで。なかなか理解されなかったりするんですけど」

-例えば、直情型のパンクバンドをやってみたりとか?

「そういうのでもいいし。1年に1回しかライヴしないバンドでもいいし、海外でしかやらないとか。いっぱいあるんですよ。顔を隠して、自分の名前を出さなくても良かったりするんですけど。なんかもっとこう、自分が抱えている熱量っていうか……個展の話に戻りますけど、燃えてるものをどんどん出さないともったいないじゃないけど、それを出してこそ、“自分”がいる意味があるのかなと思うんで。そうしないと無駄に死んでいくような気がして。その時の勢いとかもあるじゃないですか。それが段々なくなったりしていくのももったいないし。でも、それを自由にやることによって、周りの人に迷惑をかけたり……例えば、予定していたツアーができなくなるとか。そういう風になるのも、なんか(違う)なぁとも思うので。いろいろ考える部分もあるんですけど、僕はもっと出していきたいなって思ってますね」

-それは、アーティストとして純粋な欲求だと思いますよ。

「だから、こういう考えの人って、ミュージシャンに結構いると思うんですよね。そういう人で集まって、“俺らが集まったら何できんのやろう? 今からスタジオ入ってやってみようよ”みたいな。それでいいと思うんですよね。そういう勢いで、“なんかおもろいことができるんちゃう?”“じゃあライヴもやろう”って。自分がバンドをやり始めようとしてた頃のパワー感なんでしょうけど、それをそのまま大事にやれたらなと思うんですけどね」

純粋にやってみたいなってことを一個ずつ形にしていってるだけ
                      

-性格的に、昔からそういったところでのフットワークは軽かったんですか?

「昔はDIR EN GREYしかなくて、空いてる時間があっても、それが暇だとか無駄な時間だとかも考えなかったんですよね。こういうものなんだ、というか。でもソロ活動を始めて、フタを開けてみたら、実は無駄だらけだったっていう。まだまだ全然いけることに気づいてしまったんですよね。だから今はなんでもやってみたいですよ」

-sukekiyoで様々なバンドと対バンしてきたことも、そうした想いの表れだと思いますし。

「こことここはやらへんやろ、みたいなものをやってみた時の化学反応を楽しんだり、逆にすごく空気感が合いそうなところとやってみたかったというところですよね。DIR EN GREYだとあまり対バンがなかったりするんで、そこの壁をもう一回壊してみたらどうなるのかなと。あとは、他のバンドを観て、実際に自分がどう思うのか、ファンの方が観てどう感じるのか、とか。そういうところを見てましたけどね。TUSKさんもそうですけど、自分が今まで聴いてきた人たちと一緒にやってみて得るものも、もっとあるやろうし。いつも楽しみながらやってるんで」

-まさに今ある欲求に忠実に、というところで。

「だから、僕が中学生の頃にTUSKさんやkyoさん(D’ERLANGER/Vo)を好きだったりしたから、純粋にやってみたいなってことを一個ずつ形にしていってるだけなんで(笑)」

-ええ、気持ちはよく分かります。先達との関わりの他に、以前にLM.Cとの共演もありましたけど、Aijiさん(LM.C/G)と京さんが対バンで同じステージ立つのが18年ぶりだったと聞いて。同じ時代を生きた人たちが、巡り巡って再び交わるのもドラマがあるなぁと思ったんです。

「ああ、なるほど。Aiji君がPIERROTに入って間もない頃、まだCDも出てない頃かな。DIR EN GREYもできてない時に、京都ミューズで会ったことがあって。もうその時に、いいなぁと思ってライヴを観てましたからね」

まったくの無から自分で生み出したものは、絶対にどこにも似てない
-ええっ、レアな話ですね! 今回いろいろと話を聞いて改めて感じましたけど、ファンの人が京さんの言葉や作品に想いを重ねたりするのは、そのブレない心があるからだと思っていて。今の京さんは、何かの影響で変に揺れ動くようなことはないわけですよね。

「そうですね」

-今、いろんな人たちの声を聞くと、周りと比べるから劣等感や焦りや嫉妬とかが生まれたりするところもあって。自分勝手な間違った意味じゃなく“周りは関係ない”と思えれば、多くの不安や悩みは解消されるのかなと感じているんです。

「うん、だから……一度、すごく後悔したらいいんじゃないですか。例えば、昔、自分が影響を受けて、リスペクトから似たことをしたりするじゃないですか。憧れから“ああ、あれやってみたい”とか。それを客観的に見た時に、すごく情けないなっていう自分がいて、その時からやっぱり変われると思うんですよね」

-ああ、なるほど…。

「今自分が何かを見たとしても、なんか新しいなとか、その人の色が出てるなとは思いますけど、それを採り入れようってことはないですよね。オリジナルって、人とカブらないことじゃないですか。人とカブらないことって、自分の中にしかないんで。他人のものを見て重ねたりすることによって、そっちの色が入ってきたりする。まあ、そこからまた新しいものを作ったらいいんですけど。誰でもそうですけど、まったくの無から自分で生み出したものって、やっぱり絶対にどこにも似てないんで。それを形にするだけなので、今はすごく簡単なことだなって思ってるんですけど」

-たぶん、そこがいちばん難しいことだから、みんな悩むと思うんですよね。

「だって、例えば“あの人の顔、すごくカッコいいな。あんな顔になりたい”って思っても絶対に無理じゃないですか。結局は、自分が今持っている顔と体型と、その人の考えしかないわけで。じゃあどうしたらいいのかっていったら、そこを素直に出すしかない。自分が持ってる武器をそのまま出すしかないから。でも、そこを純度100%で出すことによって、絶対に人とはカブらない。それしか生き抜く道はないんですよね。やっぱりカッコいいと思ってる人を追い続けても、その人には勝てないんで。それじゃあ、駄目っていうか、2番で終わると思う。どこかでずっと後悔したまま歳を重ねていって、で、フタを開けたら“ずっとあの人のこと追いかけてたな”って……ダサいじゃないけど、自分はそういう生き方はしたくないですし」

-見た目の話が出ましたけど、それは才能やお金とか、あらゆることに置き換えられますからね。

「そうですね。気づいてないかもしれないけど、傍から見たら、絶対に自分だけのいいところがあったり、絶対に人が持ってない部分があると思うんですよね。生き方も環境も、それぞれ全然違うと思うし。絶対にカブることはないわけですから」

(インタビュー・文:早川洋介 撮影:西槇太一 sukekiyoアーティスト写真以外)
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